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藤井聡太七段 vs. 増田康宏六段③|形勢判断をAIの評価値で解説

5六飛の局面

この将棋のポイントは、以下の6点です。
  1. 過去の対戦は2局で、成績は1勝1敗。
  2. 増田六段が192局目の公式戦で、初めて振り飛車を採用
  3. 増田六段の振り飛車(中飛車)に、藤井聡太七段はエルモ囲いで対抗。
  4. 昼食は、藤井聡太七段が玉子チャーハン(紫金飯店)、増田六段がカツカレー(ほそ島や)。
  5. 夕食は、藤井聡太七段がとろろせいろそば(ほそ島や)、増田六段が肉豆腐定食(みろく庵)。
  6. 78手目の△5六飛が鮮やかな決め手
ここではポイントの局面をピックアップして、将棋ソフトのAI(elmo)の評価値と候補手を参考に、形勢判断を解説します。

1. 序盤戦

1–1. 増田六段が中飛車を採用

13手目・中飛車の局面
13手目で、先手の増田六段が中飛車に振りました。
増田六段は192局目の公式戦で、初めての振り飛車です。
藤井聡太七段は全く予想できなかったはずで、増田六段の用意周到な作戦と言えます。
この時点の評価値は、増田六段の「−37」です。
(300点以内は互角とされています)

1–2. 藤井聡太七段がエルモ囲いに

20手目・エルモ囲いの局面
20手目で、後手の藤井聡太七段がエルモ囲いにしました。
エルモ囲いは、将棋ソフトの「elmo」が頻繁に採用する囲いで、AIが登場する前には見られなかった囲いです。
藤井聡太七段が、将棋ソフトの影響を受けていることが読み取れます
この時点の評価値は、藤井聡太七段の「+46」です。

2. 中盤戦

2–1. 初めて駒がぶつかる

31手目・4六歩の局面
31手目、増田六段の▲4六歩で、初めて駒がぶつかりました。
ここから△同歩▲同角と進んで、中盤戦に入りました。
31手目の形勢判断は、増田六段の「−138」です。
(評価値は100点差で、歩1枚分の差と言われています)

2–2. 増田六段が角の捌きを狙う

41手目・5五歩の局面
41手目、増田六段が▲5五歩として、角の捌きを狙いました。
この瞬間、藤井聡太七段の玉は、小ビン(斜め上のこと・この場合は4三の地点)が空いており、少し不安があります。
増田六段は自玉に不安がなく、▲4五歩で藤井玉への拠点を作っています
このタイミングで増田六段が戦いを仕掛けるのは、納得できるかと思われます。
この後は△同歩▲同角△同角▲同飛と進んで、増田六段が角の捌きに成功しました。
41手目の評価値は、増田六段の「−203」です。

2–3. 藤井七段が自玉のキズを消す

48手目・4三歩の局面
48手目、藤井聡太七段が△4三歩として、自玉のキズを消しました。
羽生善治九段は自著の中で「プロは例外なく守りが固い」と言われていますが、△4三歩はまさに、守りの固さを感じる一手です。
(『迷いながら強くなる』、P178の言葉です)
48手目のAIの形勢判断は、藤井聡太七段の「+28」です。

2–4. 藤井七段が反撃に出る

64手目・5八歩の局面
64手目、藤井聡太七段が△5八歩として、反撃に出たところです。
先手が▲5八同歩と取ると、桂馬を取りながら△8九飛成と攻め込まれてしまうため、先手はこの歩を取ることができません。
増田六段は▲7九飛と逃げましたが、飛車を攻撃に使えなくなってしまいました。
64手目の評価値は藤井聡太七段の「+687」で、後手の藤井七段が徐々にリードを広げつつあります。

3. 終盤戦

3–1. 藤井七段がはっきり優勢に

72手目・4九桂成の局面
72手目、藤井聡太七段が△4九桂成として、美濃囲いの金を桂馬で取ったところです。
盤面の左側の桂馬を比較すると、増田六段の桂馬は8九で眠ったままです。
藤井七段の桂馬は、8一 → 7三 → 6五 → 5七 → 4九という大活躍で、守りの要の金と刺し違えています。
72手目の評価値は藤井聡太七段の「+1255」です。
AIの形勢判断は、800点以上で優勢、1500点以上で勝勢とされているので、藤井七段がはっきり優勢になりました。

3–2. 次の一手問題

77手目・7七歩の局面
77手目、増田六段が▲7七歩と打って、飛車の相打ちを狙ったところです。
ここで、次の一手問題です。
画面をスクロールなさらずに、後手番の藤井聡太七段がこの局面で指した決め手をお考え下さい。
ヒントは、取られそうな7六の飛車を活用する手です。
この局面の評価値は増田六段の「−2231」で、藤井七段の勝勢となっています。

3–3. カッコいい決め手

投了図
次の一手問題の答えは、△5六飛でした。
取られそうな飛車を、相手の飛車にぶつけて活用する一手です。
増田六段が▲5六同飛とすれば、藤井七段の飛車はタダで取られてしまいますが、そこから△3九角▲1八玉△3八金と進めて、先手玉は受けがない状態、後手玉には詰みがない状態となります。
この△5六飛の局面で、増田六段が投了されました。
順位戦の持ち時間は1人6時間ですが、藤井聡太七段の消費時間は4時間18分で、1時間42分を残しての勝利となりました。
AIの評価値を見ると、13手目以降、増田六段がプラスになった局面は一度もありませんでした。
藤井聡太七段が序盤から少しずつリードを広げて、危なげなく勝ち切られた将棋だったと言えます。

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